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2015年の9月頃、愛知県警察が、星座から見た交通死亡事故の特徴というものを発表し、話題になりました。
関心を持ってもらう意味で好意的に見る意見もありましたが、もちろん
非科学的
という批判もありました。
ところが、この星座占い、あながち非科学的とは言い切れません。これを単純に非科学と言ってしまうのは、科学に対して盲目な立場で、むしろそちらのほうが逆に非科学的で理性に欠けるといえます。
Contents
何故、通常、占いは非科学的なのか
なぜ、この星座占いが非科学的でないかを説明する前に、逆に、通常、占いが何故非科学的といえるかを考えてみましょう。いろいろとあるでしょうが、
「どんな場合でも占いはあたっているとこじつけられてしまう」
ことが大きい、つまり、正しい正しくないの検証をやりようがないことが理由の一つではないかと考えます。
基本的に、占いはたいてい当たります。これは、
・当たりやすいことを書いている
・解釈が幅広くできる書き方をしている
・占いを見た側が逆に占い結果に合わせて行動する
からです。星座占いで自分ではない欄を見てみると、別にその星座でなくても当てはまるようなことも書かれています。
例えばおひつじ座は携帯電話の使用運転が多いという注意をしていますが、携帯電話によるながら運転する人はおそく、獅子座の信号無視や、乙女座の一時不停止もする可能性が高いでしょう。心当たりのある方であれば、星座を入れ替えても「これは当たっている」と思う可能性は高いです。
また、注意すべき月を見ると12星座のうち、8星座が「12月に注意」と書かれています。12月は飲み会や仕事の締めなどで忙しくなることから交通事故率が上がりますので、ほとんどの星座(全部と言わない点は後述)で、「12月に注意」といえばあたってしまいます。
その意味では、なんとでも言えてしまう星座占いは、普通であれば非科学的です。
何故「星座から見た交通死亡事故の特徴」が非科学的とは言い切れないか
先程は12月といえばあたってしまう星座が8つあると書きましたが、逆に言えば、4つの星座は12月が要注意月になっていません。その4つの星座は、
おうし座(4月20日~5月20日)
かに座(6月22日~7月22日)
いて座(11月23日~12月21日)
みずがめ座(1月20日~2月18日)
です。
ここで特に注目したいのは、いて座(11月23日~12月21日)です。いて座は12月が注意月になっていないだけでなく、一番事故が少ない星座でもあります。
何故いて座は事故が少ないのか。いて座の星の位置と重力に影響されている?いいえ、こんな仮説が考えられます。
免許更新
免許更新は誕生日の前後それぞれ1カ月間です。
この間は普段の月に比べて安全運転について注意する可能性があります。いて座の場合には11月23日~12月21日が誕生日なので、交通事故の起こりやすい12月の時期は運転に注意するので、その分交通事故に合う数が減る。
つまり、月区分によって設けられたイベントという、人間が決めた制度のおかげで、事故の発生率が低くなっている可能性があります。私が星座占いがあながち非科学と言えないというのはこういう理由です。
もちろん、この仮説は外れている可能性はあります。いて座が交通事故が少ない反面、その次の月とさらに次の月のやぎ座(12月22日~1月19日)とみずがめ座(1月20日~2月18日)はそれぞれ交通事故でなくなる率が2位1位です。やぎ座は免許更新が12月にも可能なので、何故やぎ座は交通事故で亡くなる人がみずがめ座に次いで多いか、という問題が発生します。
ただ、逆に考えると、みずがめ座よりやぎ座の方が亡くなる人が少ないのは免許更新が12月にかぶっているからという仮説を考えることができ、そうすると、
12月22日~2月18日の人には事故を発生させやすい何らかの社会制度が存在する
という仮説をたてることができます。残念ながら、私の力では、「何らかの制度」が何であるかわかりませんし、仮説があたっているとは限りません。
愛知県警の星座占いの公開には意味があるか
愛知県警が出した星座による分類は、月ごとの統計ですので、その意味ではあながち非科学的ではありません。
愛知県警は「興味を持ってもらうために」星座占いによる結果を公開しているのでしょう。その意味では公報としては成功です。また、この公報で交通事故が減るのであれば、文句のつけようはありません。意味のある活動です。警察の分析部署は科学的分析能力を持つ必要があるでしょうが、警察が科学的思想を啓蒙する必要は業務上ありません。(業務遂行の結果的にたまたま科学的な啓蒙になることはありえます)
また、一般ドライバーが「自分はこの星座だから」とネタにする程度なら目くじらを立てることはないと思います。一般ドライバーは分析の専門家ではないですし、科学的思考をしなければいけない義務はありません。
生年月日は変えられないが、制度は変えられる
ただ、もし愛知県警が「生年月日で運命が決まる」と考えていたとしたら問題です。
「生年月日や星の位置という本人ではどうにもならない要素で運命が決まってしまう」ような捉え方をされると、そこで問題を解決しようとする活動は止まってしまいます。生年月日を変えることはできません。でも生年月日や月の割当と関係する社会制度の方は変えることができます。
愛知県警は、この結果を元にして交通事故結果を仮説検証して、例えばキャンペーンをいつどう行ったら良いかなど、どう制度を変えればよいかを言ったことを考えなおすべきと考えます。
防災SNSアドバイザー。情報処理安全確保支援士第5338号。ネットワークスペシャリスト。ITコーディネータ
東北大学大学情報科学研究科第2期生。1994年からインターネットに携わる。システムベンダーの総務社内SEとして、社内システムの構築運用やBCP策定、従業員教育に関与。2015年情報セキュリティ専門法人「まるおかディジタル株式会社」を福井県坂井市丸岡町に設立し現在に至る。研修では基本的に防災のお話以外では着物でお話させていただいております。
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